サラリ医マン のブログ

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AZF欠損と男性不妊

AZF欠失と男性不妊

 

知り合いの先生から相談があったので調べてみました。

 

ヒトの場合、44本は常染色体と男女の性別を決定づける2本の性染色体を持っています。女性は46XX、男性は46XYと表現されます。

この男性が持っているY染色体の中に、無精子症因子(Azoopermia factor:AZF)というものがあります。

このAZF因子の構造に問題があると、男性不妊となります。

 

・AZFc

AZFにはAZFa、AZFb、AZFcの三つの領域があり、この領域の遺伝子配列に問題がると精子が正常に作られません。

AZFa、AZFb領域の異常の場合は無精子症となることが分かっており、精巣内精子回収術を行っても精子が回収できる可能性は残念ながらありません。

一方で、AZFc領域の以上の場合は精巣内で精子が造られている可能性が高く、乏精子症ではあるものの射精精子内に精子が見つかる場合があります。

また、無精子症であっても精巣内精子回収を行う事で精子が見つかる可能性があります。

 

Chromosomal and Y-chromosome microdeletion analysis in 1,300 infertile males and the fertility outcome of patients with AZFc microdeletions. 

Andrologia. 2019 Dec;51(11):e13402. doi: 10.1111/and.13402. Epub 2019 Oct 24.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

では、

1,300人の不妊男性における染色体異常の頻度は10.6%

AZF微小欠失の頻度は4.0%

AZFc欠失があったのは26名

AZFc欠損かつ無精子症の15人に精巣内精子回収を行ったところ8名から精子が得られた。

となっています。射精精子が認められることがあるのもポイントですね。

 

TESE or Micro TESE

精巣内精子回収の方法についてはどうでしょうか。

Microdissection TESE is superior to conventional TESE in patients with nonobstructive azoospermia caused by Y chromosome microdeletions. 

Andrologia. 2016 May;48(4):402-5. doi: 10.1111/and.12460. Epub 2015 Aug 25.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

では、顕微鏡を使わないConventional-TESEと顕微鏡下に精子を探すMD-TESEを比較しています。

従来の多眼式TESEの精子検出率は25%であったが、MD-TESEの精子検出率は67%と有意に高かったと報告されています。

射精精子が見つかる場合はそれを使うのが選択肢かと思います。

うまくいかずにTESEを考慮する場合や無精子症で精巣内精子回収を検討するAZFc欠損患者さんの対応は顕微鏡を持っている病院で対応した方がよさそうですね。

 

おしまい。

 

と思ったら射精精子を使った論文がありました。

Y chromosome AZFc microdeletion may not affect the outcomes of ICSI for infertile males with fresh ejaculated sperm

J Assist Reprod Genet. 2013 Jun;30(6):813-9. doi: 10.1007/s10815-013-0009-y. Epub 2013 May 30.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

では、

AZFc微小欠失の存在が、射精精子を用いた卵細胞質内精子注入法(ICSI)の結果に悪影響を及ぼすかどうかを検討しています。

結論としては Y染色体AZFc微小欠失を有する乏精子症患者のICSI臨床成績は、基本的には正常なY染色体を有する不妊症患者と同等である。

となっているので、やはり射精精子を使うのが1st choiceのようですね。

 

おしまい。