新型コロナウイルスワクチン接種後の精子と不妊
Gonzalez DC, Nassau DE, Khodamoradi K, et al. Sperm Parameters Before and After COVID-19 mRNA Vaccination. JAMA. Published online June 17, 2021. doi:10.1001/jama.2021.9976
本朝から話題の論文、色々思う所はあるのですがTwitter等で発信するとアルファからゴリゴリにやられる発信力のある先生方からご意見を頂戴する可能性があるのでＤＥＥＰＬ勝手翻訳とコメント。
概要
・BNT162b2（Pfizer-BioNTech社）とmRNA-1273（Moderna社）の2種類のmRNAワクチン（2回接種のもの）
・マイアミ大学で行われたこの単施設の前向き研究
・18歳から50歳までの健康なボランティアを
・COVID-19の症状があったり、90日以内に検査結果が陽性であった人は除外。
・2日から7日の禁欲期間の後に精液サンプルを提供。
・世界保健機関（WHO）のガイドラインに沿って分析
・精液量，精子濃度，精子運動性，全運動精子数（TMSC）を算出
・精子濃度が1,500万/mL未満の人は除外
・45人の男性のうち、21人（46.7％）がファイザー、24人（53.3％）がモデルナ製を接種。
・ベースラインサンプルは、中央値で2.8日（IQR、2～3）の禁欲期間後に採取
・フォローアップサンプルは中央値で3日（IQR、3～4）後に採取。
結果
・2回目のワクチン接種後，精子濃度の中央値は3,000 万/mL（IQR，21.5-40.5 ；P＝0.02），総運動精子数の中央値は4400万(IQR, 27.5-98;P = .001)と有意に増加した。
・45名の男性のうち、8名は接種後に乏精子症となった（濃度中央値、850万/mL［IQR、5.1-12］）。
・8人のうち、7人は追跡調査時に正常精子域まで精子濃度が増加し（中央値、2200万/mL［IQR、17-25.5］）
・1人は乏精子症のままであった。
・ワクチン接種後に無精子症になった男性はいなかった。
考察
・ワクチンには生ウイルスではなくmRNAが含まれているため、ワクチンが精子のパラメータに影響を与える可能性は低いと考えられる。
・今回の結果では、すべての精子パラメータに統計的に有意な増加が見られたが、変化の大きさは通常の個人差の範囲内。
・この増加は、2回目のサンプルを採取するまでの禁欲期間が長くなったことによるものかもしれない。
・乏精子症の男性では、さらなる減少は見られなかった。
・この研究の限界は、登録された男性の数が少ないこと、若くて健康な男性以外への一般化には限界があること、追跡期間が短いこと、対照群がないことなど。
・精液分析は男性不妊症評価の基礎となるものですが、不妊症の可能性を予測するには不完全。←これ大事
パラメータ自体には問題ないけど奇形率とかDNA損傷とか評価していないし、経過を見ていく必要があると思います。ただ、おおむね問題はないような印象のデータですし、感染したほうがもっと精巣には致命的になる可能性が高いと思います（個人的感想）。
ただ、
そもそも精液所見は相当ばらつきがあるので、前後一回だけというのは気になる。
偽薬投与群がいない。
被験者が少ない。
というところは気になります。
読みようによっては『正常精子所見の人に投与したら45人中１人の精子所見は悪化し、元にもどらなかった』とも言えますからね。
(個人的感想)
追記
引用文献 2
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
Berry SD, Johnson KS, Myles L, et al. Lessons learned from frontline skilled
nursing facility staff regarding COVID-19 vaccine hesitancy. J AmGeriatr Soc.
2021;69(5):1140-1146. doi:10.1111/jgs.17136
看護スタッフへのアンケート結果：ほとんどのスタッフが、友人やソーシャルメディアからワクチンに関する情報を得たと回答した。
ワクチンが急速に開発されたことや、不妊や妊娠に関する懸念を含む副作用についての懸念が頻繁に挙げられた。
COVID-19 ワクチンに関する誤った情報が SNF スタッフの間で広まっていた。
肯定的な感情や物語を共有することは、SNFスタッフのワクチンに対する躊躇を減らすために、データを共有するよりも効果的であるかもしれない。
SNSからは正しい情報提供が必要ですね。
僕はTwitterみたいな丁々発止のやり取りは苦手なのでブログからこそこそやっていこう。
引用文献 ３
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
Best JC, Kuchakulla M, Khodamoradi K, et al. Evaluation of SARS-CoV-2 in
human semen and effect on total sperm number: a prospective observational study.
World J Mens Health. 2021;39(e12).
ウイルスは感染から回復した男性の精液からは検出されなかったが、急性期には射精液中の総運動精子数に影響を与える可能性がある。
SARS-CoV-2が長期的に精子形成機能に影響を与えるかどうかは、今後の課題である
以上です。
